本研究の目的は、日本語の授受構文を、その関連構文を視野に入れつつ体系的・実証的に分析し、その意味的・統語的・語用論的特性を明らかにすることである。具体的には、授受構文の特性を、内省による言語直観に加え、大規模コーパスのデータに基づく詳細な事実観察から明らかにすると共に、その現象の背後に潜む認知的・機能的メカニズムを探ることによって、記述言語学、理論言語学の両面への貢献を目指すものである。昨年度は、とりわけ、授受構文の文法化、他動詞構文の日英対照、授受構文と他動詞構文のネットワーク、介在使役構文、移動動詞とダイクシス、アスペクトなどの研究テーマに関して、認知言語学的・語用論的観点からの分析を行った。その成果の一部は、上記の学会誌、論文集や国内外の学会にて発表し、更なる課題点も明確となった。 本年度は、昨年度の研究課題の一部を引き継ぐと共に、ベネファクティブ構文とマルファクティブ構文、提示動詞「見せる」の文法化、「てくる」「ていく」構文の多義性、「来る」とcomeの比較、等について、対照言語学的・類型論的視点を視野に入れた分析を行う予定である。なお、本年度は、6月に、関西言語学会(ワークショップ(複雑述語の形式・機能とダイナミズム-目本語・琉球語・韓国語をもとに-)での発表が決定している。
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