研究概要 |
本研究では,3種類の実験手段を用いて,tRNA依存アミド基転移酵素GatCABが持つアンモニアチャネルの制御機構の解明を目指している. 第1の実験手段は,GatCABの立体構造を高分解能で明らかにすることにより,水分子とアンモニア分子を区別し,GatCABが持つアンモニアチャネルにより輸送されるアンモニア分子を直接観察することを目的としている.現在得られているGatCABの立体構造は2.3A分解能であり,水分子とアンモニア分子を区別するには,より高分解能で立体構造を決定する必要がある.本年度は,今まで得られていたGatCABの結晶化条件をさらに条件展開することで,1.9A分解能でGatCABの立体構造を明らかにすることに成功した.第2の実験手段は,アンモニアチャネルが開通するために必要な,Glu-tRNA^<Gln>とGatCABの複合体を立体構造解析することで,アンモニアチャネルの動きを明らかにすることを目指している.本年度は,不安定であるGlu-tRNA^<Gln>を用いて結晶化する前に,安定であるtRNA^<Gln>を用いてあらかじめGatCAB・tRNA^<Gln>複合体の結晶化条件の絞り込みを行った.その結果,約2ヶ月後に20Aと低分解能ながら,0.1MHEPESpH7.5,25% w/v Polyethylene glycol 3,350,0.2M Sodium chlorideの条件で結晶を得ることに成功した.第3の実験手段は,アンモニアチャネルを制御しているゲート(E125)とGlu-tRNA^<Gln>の結合を感知するセンサー(D126,R190)の2カ所に直接変異を導入することで,アンモニアチャネルがゲートとセンサーで制御されていることを活性測定にて明らかにする.本年度は.ゲートとセンサーの変異体を大量に調製し,今後の活性測定に向けサンプルの準備を行った.
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