昨年度までの研究から、Polζ-Rev1がDNA二本鎖切断修復に関与することが認められた。今年度は、Polζ-Rev1の上流で機能すると考えられているRad18に焦点を当てた。Polζ-Rev1と同様、Rad18はDNA二本鎖切断修復に関与することが確認できた。実際にRad18はDNA二本鎖切断部位に局在することがわかった。昨年度に、他の損傷乗り越え型ポリメラーゼであるRad30がDNA二本鎖切断修復に関与しないことを明らかにした。しかし、Rad18はPolζ-Rev1とともにRad30の上流で機能することが示唆されていた、この矛盾はDNA二本鎖損傷部位への局在で説明できる、Polζ-Rev1はMec1によりDNA二本鎖部位に局在する一方、Rad30はMec1による局在制御を受けない。結果として局在したPolζ-Rev1のみがRad18の制御を受け、DNA二本鎖切断損傷を修復すると説明できる、これらの結果をDNA Repair Journalで報告した。 真核生物は染色体の末端を保護するため、テロメアと呼ばれる特殊な染色体末端領域を有している。テロメアは老化とともに短くなるため、細胞老化の一因である。無限に増殖するガン細胞は、テロメアを伸長させることで細胞老化を回避している。このようにテロメアはガン化や老化に深く関係があるため、テロメア維持機構の解明は抗ガン剤や抗老化剤の開発に役立つことが期待される。出芽酵母を用いた過去の研究から、テロメアにTel1とよばれるタンパクが結合し、テロメアを伸長させることがわかっていた。私は、他のテロメア結合タンパクであるRif1とRif2がTel1のテロメア結合を阻害することにより、テロメアが一定の長さに保たれていることを明らかにした。これらの結果をMolecular Cellで発表した。
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