木星極域の高エネルギー電子バースト・急速なオーロラ発光等の物理過程と関連が示唆されている準周期的低周波電波バースト現象であるQuasi-Periodic burst(以下、QPバースト)は、木星極域磁気圏における周期的で強力な粒子加速過程の情報を反映する重要な現象だと考えられている。しかし、その様々な周期性(数分、15分、40分変動)の決定要因・発生領域・発生機構等の詳細は長年不明であった。本研究では、観測で認識されているすべての周期性のQPバーストに共通する周期性の決定要因・発生領域・発生機構等を考え、QPバースト発生の物理過程の総合的な解明を試みることを目標に研究を行った。 本年度においてはまず、ユリシーズ・ガリレオ探査機によって観測された波動データに基づき、QPバーストの出現特性の統計解析をすべての周期性について行った。その結果、「QPバーストは木星近傍の特定領域では観測されない」等の、この現象に特有な出現特性が統計的に明らかになった。また、木星磁気圏中におけるQPバーストの伝搬課程をモデル計算し、観測で得られた統計解析と比較することによって、同現象の発生領域や発生機構を考察した。その結果、一部のQPバーストにおいては、今まで自己の研究において示唆された発生機構・発生領域等とは異なるものを持つ事が示唆された。現在はその差異についても考察中である。 本年度得られた研究成果に関し、国内外の学会においてポスター・口頭発表を行った。また、本研究に関連のある研究結果をPlanetary and Space Science誌に投稿し、受理された。
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