研究課題
強誘電体の構造相転移は、分極の揺らぎによって起こる。この分極揺らぎは、圧電性と大きく関わっており、相転移温度近傍におけるダイナミクス(イオンの振動と緩和)を理解することは、基礎物理・応用から非常に興味深い。特に鉛系ペロブスカイト酸化物は、他の強誘電体には見られない性質(巨大圧電定数や大きな自発分極)があり、その機構はまだ明らかになっていない。これは、巨視的な性質が様々な周波数成分を持った揺らぎによるためであり、系が複雑になっていることに起因する。本研究ではこの揺らぎをkHz〜THzの広い周波数領域で観測し、鉛系ペロブスカイト酸化物の相転移機構を明らかにすることを目的とする。平成19年度は、3年間の実施機関の初年度にあたり、1.鉛系ペロブスカイトの代表であるチタン酸鉛の単結晶成長 2.巨大圧電定数を有するリラクサー強誘電体のダイナミクスを光散乱より調べることを行った。1.フラックス法と浮遊帯域溶融法にて、光散乱を行うのに十分な単結晶を得ることができ、現在、それらの基礎物性とダイナミクスを光散乱と誘電率測定で調べている。相転移温度近傍で、配向分極の緩和に起因すると見られるセントラルピークが現れ、音響フォノンや光学フォノンとどのように結合しているかをこれから議論する。2.配向分極の緩和に起因するセントラルピークを広い周波数領域で観測することにより、これまで1つと言われてきた緩和機構が2つ存在することを明らかにした。そして、その緩和機構に対するモデルを、音響フォノンとの比較から提案している。現在、このモデルをより洗練するため、様々な試料において同様の実験を行っている。
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