研究概要 |
初年度の年次計画に記したとおり、日本国内にて研究対象を再度整理することに研究活動を集中させた。具体的には、短詩形を用いた詩人パゾリーニ、ウンガレッティの作品の分類・分析であるが、膨大な作品群からサンプルをひきだす作業が大詰めに入っている。暫定的な成果は研究発表(於・早稲田木学)、またはイタリアの研究誌Pier Paolo Pasolini Dossierからの依頼原稿(伊英二カ国語にて2008年に出版予定)に反映されている。ローマでの調査によりウンベルト・サーバの短詩(連作「日本風の間奏」)についての有力な資料が手に入ったため新たな考察対象に加えている。 一方でイタリアでの出版(フィレンツェCesati出版)のために2005年3月にボローニャ大学に提出した博士論文L'esperienzafriulana di Pasoliniを再度の推敲を本格化させている。というのも以前部分的に発表した論考がStudi pasoliniani(I,2007)掲載のR,Rinaldi教授の論文に引用されるなどして認められ、博士論文全体の出版がパゾリーニ研究の分野で求められているからである。2008年3月の調査でイタリア諸都市(ローマ、フィレンツェ、ボローニャ、ヴェネツィア)の大学の研究者との交流を深め、イタリアにおける日本の短詩形の受容史についての共同研究計画(シンポジウム、アンソロジー出版など)を始動させている。さらにボローニャでの調査ではパウンドのイタリアにおける近年の再評価を確認した。この流れのなか、特別研究員もパウンド=日本短詩=パゾリーニという繋がりについての論考(編集顧問として参加しているシエナ大学比較文学科発行Semicerchio誌上を予定)で新たな問題提起を投げかけたいと考える。
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