1、政治体制とリンケージ:プログラム・パトロネージ・リーダーシップの3つのリンケージに着目し、以下の結論を得た。(1)全体主義的動員の強度は「イデオロギーの抽象度+統制・動員の強度」であり、強度の動員は権威主義体制下でも発生しうる。(2)全体主義・権威主義のいずれの体制でもパトロネージのネットワークの集中が生じ、一部の資源へのアクセスが制限される。(3)スルタン型のリーダーシップに立脚した政治体制は組織型仲介のパトロネージに支えられており、抽象度の高い全体主義的プログラムと両立しうる。 2、ファシズム期イタリアの統治構造:(1)ファシズム期イタリアの統治構造は「国王・政府首長・大評議会の三元制」と規定するのが妥当である。(2)ムッソリーニは3つの機関を「三すくみ」の状況に再編した上で、政府首長が大評議会を従えて国王を押さえ込むことを目指していた。(3)「ラスから「高官」へ」と呼ばれる現象は、パトロン型仲介から組織型仲介へのパトロネージの移行に対応していた。(4)ファシズム期イタリアでは、プログラムとパトロネージの面では全体主義化が進行したのに対して、リーダーシップの面ではムッソリーニへの権力集中と彼の裁量権の拡大が進み、スルタン化の傾向が強まった。 3、地域政治とサブリーダー:今年度はボローニャ県のアルピナーティを主な対象として研究を行った。(1)複数の有力者が競合していたボローニャでは中央に依存しなければ支配を確立することができなかった。(2)ボローニャ市におけるアルピナーティのスポーツ振興策は全国的に高く評価されており、このことが彼の威信の源泉になっていた。
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