研究概要 |
土壌・地下水中に遍在するコロイド粒子が低溶解性の汚染物質のキャリアーとして作用するコロイド促進型のメカニズムを明らかにする基礎的観点から,モデル実験系を用いて,自然界の主要な有機コロイド成分であるフミン酸の移動特性を解析した. ガラスビーズを充填した飽和カラム内を移動する腐植物質のアルカリ可溶・酸不溶成分であるフミン酸が,共存する一価塩(塩化ナトリウム),あるいは二価塩(塩化カルシウム)の濃度変化に対して,どのようにその流出特性を変えるかを酸雰囲気下で実験し,その実験結果からガラスビーズ表面に対するフミン酸の沈着速度を算出し,コロイド安定性の観点から解析した.その結果,フミン酸は,塩濃度に制御されるコロイド安定性にしたがって,その移動特性を変えることが明らかとなった.具体的には, ・急速沈着領域と緩速沈着領域の閾値となる臨界沈着濃度が明瞭に観察される ・緩速沈着領域においては,塩濃度と沈着速度係数の対数が直線関係を示す ・これらの現象が一価塩,二価塩の共存下でともに観察される ・二価塩共存下における臨界沈着濃度が,一価塩共存下におけるそれと比較して2オーダー低いことが,フミン酸の移動がコロイド安定性に従っていると判断付けた根拠である. この結論から,塩濃度が比較的低い地下水中や灌漑期の水田においてはフミン酸の移動が起こりやすく,塩濃度の高い海水浸入地下水などでは移動が起こりにくいことが示唆される.
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