研究概要 |
カブトムシ(Allomirina dichotoma, Oryctes rhinoceros)由来の抗微生物ペプチド、ディフェンシンに基づき化学合成されたD型アミノ酸改変ペプチド(D-peptide A、B、C、D)は正電荷を持ち、負電荷を帯びた細菌細胞膜を破壊することで抗細菌活性を示すことがこれまでに分かっている。最近、この改変ペプチドが種々のがん細胞に対しても濃度依存的に増殖抑制効果を示すことが分かった。その中でも特に、D-peptide Bはマウス骨髄腫細胞(P3-X63-Ag8.653)に対して強い増殖抑制効果を示した。さらに、走査電子顕微鏡およびフローサイトメトリーを用いた実験の結果、D-peptide Bは骨髄腫細胞の細胞膜にダメージを与えることで増殖抑制効果を示していることが明らかになった。 がん細胞膜表面には負電荷を帯びたフォスファチジルセリン(PS)が多く表出していることがこれまでに報告されており、これがD型アミノ酸改変ペプチドの抗がん活性に寄与していると考えられた。そこで種々のがん細胞の細胞膜表面PS密度を測定してみたところ、細胞膜表面にPSを高密度に表出しているがん細胞株ほどD型アミノ酸改変ペプチドに対する感受性が高かった。このことから、ディフェンシン由来D型アミノ酸改変ペプチドの抗がん活性は負電荷依存的であるということが明らかになった。
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