主にNMR法を用いて、GβγによるGIRK開閉機構を立体構造の観点から解明することを目指した。まず、GβγとGIRK細胞内領域の相互作用のNMR解析に向けて、GIRK細胞内領域の主鎖アミドプロトンの3重共鳴測定による帰属を行い、観測可能な主鎖アミドプロトン200残基の57%に相当する113残基の帰属を完了した。一方、GIRK細胞内領域との相互作用解析を行うためのGβγの発現コンストラクトを検討し、高純度に精製でき、NMR解析に用いる100μM以上の濃度においても安定なコンストラクトである、GγのN末端にヒスチジンタグを付加し、脂質修飾をなくした変異体:Gβγ(His-C68S)を用いることに決定した。以下、Gβγ(His-C68S)をGβγと記す。GIRK細胞内領域とGβγの相互作用は、表面プラズモン共鳴法により100μM以上の解離定数であることを明らかとした。さらにNMRを用いた転移交差飽和(TCS)実験と化学シフト摂動(CSP)実験により、GIRK上のGβγ結合部位および結合に伴う構造変化領域の同定を行った。各NMR実験において観測されたスペクトル変化を・現在までの帰属結果と照らし合わせて解釈すると、GβγはGIRK細胞内領域4量体のサブユニット境界面に結合し、サブユニット間の相対配置を変化させることにより、Gβγ結合界面から離れたGIRK上のループ部位にも構造変化を引き起こすと考えられる。今後、全ての残基の帰属を完了することにより、GIRK細胞内領域上のGβγ結合部位とGβγの結合に伴う構造変化部位の全貌をアミノ酸残基レベルにて明らかとできる。
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