「殺ダニ剤抵抗性遺伝子の連鎖関係の解明」についての研究成果 本研究では、中立遺伝マーカーを用いた遺伝子地図上での、ハダニの殺ダニ剤抵抗性遺伝子の相対的位置を調べることで、これまでハダニが獲得した抵抗性の種類と数のパターンを調べる。具体的には、複数の全く異なる作用機構を持つ殺ダニ剤に抵抗する単一の遺伝子や遺伝子群を発見することが期待される。これによって、染色体上の位置による抵抗性遺伝子の分類が可能となる。この分類を基礎とした殺ダニ剤のクラス分けによって、ローテーション散布がより効果的に抵抗性の発達を抑制できるようになると期待される。以下は、本研究テーマの進行状況である。 まず、ナミハダニ(Tetranychus urticae)とその近縁種であるカンザワハダニ(T.Kanzawai)ついて、10世代の連続母子交配による近交系統を作成した。そして、近交系統間で戻し交雑を行い、1世代目のメス個体のマイクロサテライトの遺伝子型を調べた。多型のあった遺伝子座の大半が連鎖地図上に位置づけられたことから、この連鎖地図は染色体の大部分をカバーするものである可能性が高い。また、両種の染色体は2n=6であり、3つのマイクロサテライト連鎖群が、それぞれ染色体に該当する可能性が高い。ナミハダニにおいて、殺ダニ剤であるエトキサゾール抵抗性近交系統と感受性近交系統間の戻し交雑1世代目個体をエトキサゾールで淘汰したもののマイクロサテライト遺伝子型を調べた結果、遺伝子座TuCT09とTu11において有意なハーディーワインベルグ平衡からの遺伝子型のずれが検出された。これは、殺ダニ剤エトキサゾールの抵抗性遺伝子が両マイクロサテライト遺伝子座の近傍に位置することを示している。今後は得られた連鎖地図の成果を元に、さらに多くの抵抗性遺伝子の染色体上の相対的位置を特定できるものと期待される。
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