1、遺伝マーカーによる染色体地図作製と殺虫剤抵抗性遺伝子の連鎖関係の解明 Tetranychus属ハダニの殺ダニ剤に対して複雑な抵抗性遺伝子の背景を明らかにするため、マイクロサテライトによる連鎖地図によって連鎖地図の作成を行い、その抵抗性の生理機能による分類を容易にできるようにするための研究を行うことを目的とした。現時点ではナミハダニについて30遺伝子座のマイクロサテライトが作られているが、昨年までの研究結果から30遺伝子座による連鎖地図は精度が足りないことが示唆されている。今年度は、ハダニのジェノミックライブラリから144のDNAフラグメントの遺伝子配列を決定した。そのうち、72でマイクロサテライトのモチーフが存在するシーケンスを見つけた。 2、圃場での集団構造の経時的変化の解析 本研究では、圃場間でナミハダニの抵抗性遺伝子が拡散しているか、またもし拡散しているならその拡散の速度とパターンはどうなっているのかを調べることを目的とする。本年度は、奈良県の平群群の花卉(キク・バラ)生産地域を調査地に選び、その地域レベルでの集団構造と殺ダニ剤発達レベルを調べることで、地域の圃場間でのハダニの抵抗性遺伝子の拡散パターンを推定することを目的とした。殺ダニ剤はテデオン乳剤、カネマイトフロアブル、マイトコーネフロアブル、アファーム乳剤、コロマイトフロアブル、ダニサラバフロアブル、およびスターマイトフロアブルについて生物検定を行った結果、調査地域でこれらの剤全てで抵抗性が見られた。抵抗性の発達パターンは、地域によって極端に異なる剤(マイトコーネ、アファーム・スターマイト)と、まんべんなく抵抗性が発達している剤(その他)とに分かれた。この結果は、抵抗性の発生初期は、抵抗性遺伝子は小さな範囲に止まっているが、その後風分散などの長距離移動によって拡散していくことを示唆した。
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