本年度は、計画していた国内外の先行研究のある研究者の下に滞在し、セミナー発表や共同研究を行って、さらに研究を深めた。特に、以下の二つの研究をした。 1.ローレンツゲージにおける双極近似されたパウリフィールツ模型の研究を、九州大学の廣島文生氏と共同でおこなった。この模型では、非物理的状態の存在のために、状態空間がヒルベルト空間でなくなるために、物理的空間にハミルトニアンを制限してスペクトルを考える必要がある。そこで、まず物理的空間を特徴づけ、その上で基底状態の存在を証明した。これにより、基底状態が光子の状態が横波だけからなる事が証明された。このことは、実験事実と一致する。 2.多様体上の場の量子論の模型を、パリ11大学のC.Gerard氏との共同で研究した。ある種の多様体上では、スカラー場の質量が空間に依存する。一般に、量子的粒子と量子スカラー場が相互作用する場合、スカラー場の質量が正の定数であれば、基底状態が存在し、質量が零であれば、(赤外切断なしなら)非存在である事が知られている。本研究では、質量の遠方での減衰が早い場合には非存在、遅い場合いは存在する事を証明した。
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