超対称性標準模型は、現在知られている素粒子を記述する標準模型のもっとも有望な拡張の1つであり、ニュートラリーノと呼ばれる有望なダークマターの候補の粒子を含む模型である。しかし、この模型では理論的に不自然な微調整が必要であることがわかっている(弱階層性問題)。これまでに、この微調整を既存のものより小さくするシナリオが提案され、そのシナリオにおいて現在素粒子実験で知られている制限を満たすパラメータ領域が調べられてきた。このシナリオの興味深い点は、未発見の粒子であるヒッグス粒子が非常に軽いため、近日稼動予定の大型加速器LHCにおいて容易にこのシナリオが検証されうるというところである。私は当該研究期間に、このパラメータ領域にさらに宇宙論的な制限を与える研究を行った。具体的には、上述のパラメータ領域においてニュートラリーノダークマターの残有量を計算し、現在観測されているダークマターの残有量を再現する領域が、このパラメータ領域に存在することを明らかにした。この研究によって、超対称性標準模型において、弱階層性問題に関する不自然な微調整を従来より軽減し、かつ実験的・宇宙論的に許されるパラメータ領域が存在することがわかった。 また上記と平行して、E6超対称性大統一理論を用いて宇宙のバリオン数とダークマターの量を同時に説明するシナリオについてした。さらに、E6超対称性大統一理論が正しければどのようなシグナルがLHC加速器実験で観測されるかについても研究を行った。これら2つについては、今後も続行して研究を深める予定である。
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