超対称性理論でヒッグス粒子が軽い場合のシナリオは、近々稼働する大型加速器LHC実験が始まるとほどなく検証できると期待される。LHCに先駆けてその宇宙論的な側面を議論しておくことは重要である。われわれは、超対称性模型のニュートラリーノが熱的残存量を求め、ニュートラリーノがダークマターである可能性を議論した。計算の結果、ニュートラリーノの質量が200-300GeVの範囲で、ニュートラリーノの残存量が、観測されているダークマターのエネルギー密度と一致する領域がある事がわかった。この研究によって、ヒッグス粒子が軽い超対称性最小模型において、ニュートラリーノがダークマターの候補になり得、なり得るパラメータ領域を明らかにすることができた。 Rパリティマイナスでバリオン数を持ったスカラー粒子の崩壊で、ダークマターと宇宙のバリオン数を同時に説明できるシナリオを、E6×U(1)A理論の枠内で実現する事ができるかどうかを調べた。E6×U(1)A理論の対称性で許されるようなスカラー粒子のポテンシャルから、現在の宇宙のバリオン数と一致するバリオンをAffleck-Dineによって提唱されたバリオン数生成のメカニズムを使って生成できる事がわかった。しかし本研究中に、スカラー粒子のポテンシャルに次元の低いバリオン数を破る項がてまれている場合、バリオン数が薄まる可能性がある事が指摘されたため、現在この効果について考察中である。
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