研究概要 |
本研究の目的は、フィリピン、マレーシア、インドネシアの森林開発地域における地元有力者や実業家たちと中央・地方の政官軍財界の癒着の構造を実証的に分析し、3国家の政治・経済権力構造の実態を把握することである。調査対象地は、マレーシアのサバ州、インドネシアのリアウ州、フィリピンのミンダナオ島である。これらの地域において、(1)各国の政治制度および土地所有権、森林事業権、木材輸出産業、森林管理等に関する制度・政策、(2)社会・経済・森林に関する統計データ(人口、民族・宗教構成、主な産業、森林面積等)、(3)地方政治・経済・社会エリート(地方政治家、官僚、実業家、社会的有力者等)のプロフィール(家族背景,学歴,職歴,所属組織政党活動歴、友人、ビジネス・ネットワーク等)等を収集し、各国の制度・政策が地方エリートたちの資源アクセスや資源(再)分配に及ぼす影響、森林開発による対象地域の社会・経済構造の変化、政治・経済的利権をめぐる地方エリート間の関係および中央政官,財界との関係、について分析する。 初年度は、各国の政治制度および土地・森林・木材産業等の制度・政策に関する文献の収集と本研究課題に関連する先行研究の収集・整理を行った。また、マレーシア・サバ州でフィールド調査を行い、同州の政治・経済・社会に関する基礎データの収集を行った。サバ州では特に、2008年3月にマレーシアで総選挙が行われたことから、総選挙の観察に主眼をおいた。この、サバ州でのマレーシア総選挙観察については、平成20年3月発行の日本マレーシア研究会会報第40号に現地報告を載せている。また、これまでの研究成果として、インドネシアの政治に関する論文「ポスト・スハルト時代のインドネシア国会議員」を『東南アジア研究』45巻1号に発表し、また、8月には、マレーシア・クアラルンプールで開催されたアジア研究の国際会議The Fifth International Convention of Asia Scholars(ICAS 5)に参加し、インドネシアの森林地域における実業家の政治的台頭に関する発表を行った。
|