昨年度に引き続き、リチウム化合物(硝酸リチウム)を使用して固体、液体状態でのLi+D核融合反応率を実測した。しかしながら、液体状態では熔融塩特有の化学反応や腐食に起因すると思われる影響で、正確な測定が困難であることが判明した。この為、当初の予定通り、標的を金属リチウム単体へと戻すことにし、3年間の研究計画の要となる超音波振動系の開発を行った。 実験上の様々な制約を考慮して、試料に超音波振動を加えながら、加速器ビームを照射できるチェンバー、振動系を製作した。この結果、世界で初めて真空中の液体金属標的に超音波を照射することに成功した。新たな課題も浮き彫りとなり、完全に当初目的を達成したとは言えないが、大きな進展が見られた。 液体標的に先立って、固体標的において超音波の照射効果をテストし、有意な差が見られた。金属標的に重陽子を照射しDD核融合反応率を実測したところ、超音波の周波数に応じた周期的な核反応率変化が実測された。このことはビーム照射により標的内部に吸蔵、蓄積された重水素が超音波により揺さぶられ、重水素密度が疎密に変化していることに起因すると推定している。
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