韓国における日系新宗教に関する調査から得たテータの分析を実施し、学会で口頭発表を行った(李賢京、「韓国宗教市場における日系宗教の受容について-創価学会を事例として-」、(韓国)日本近代学会2007年度春季国際学術大会、(韓国)済州大学、2007年5月12日)。同時に、現在、韓国のプロテスタント人口は年々低下している一方、近年日本における韓国系プロテスタント教会が短期間で教勢を拡大している現状を踏まえ、海外宣教が活発になった要因と、それによって開始された海外宣教の展開過程について検討する作業を行った。まず、韓国系プロテスタントの教派活動の資料的分析を図るため、韓国プロテスタントの海外布教と進出過程に関する文献調査および資料分析を実施し、現在までの歴史的な過程についての検討を行った(李賢京、「日本における韓国系プロテスタント教会の展開史」、『北海道大学大学院文学研究科研究論集』7、pp.247-262、2008年1月)。また、その教派活動の中心地域となる東京・大阪・札幌地域の概要を把握するため、フィールドワークを行った。上記の1年目の調査で得たデータを用いて、日本国内の「日本社会学会」と、国外の「(韓国)日本近代学会」で発表を行い、そこで得た指摘などを参考に論文集に発表を予定している。 一方、本研究は、日系宗教(また韓国系宗教)が韓国(また日本)に受容されて教勢を拡張する中、信者たちが日本(また韓国)の宗教に接する契機や、生活領域における具体的な実践などを把握し、これを通して信者たちの価値観および態度変容の過程を究明することを目的している。そのため、1年目の予備調査に引き続き、「信者たちの価値観、態度変容の過程」に対する質問紙調査を2年目に実施する予定であるが、その準備作業として、質問紙調査の質問内容および、質問項目候補の抽出や、表現の適切さを検討する作業も同時に進めている。このように、本研究は現在日本で活動を展開している韓国系の宗教団体をその研究対象としている点で、独創的な研究であると考えられる。さらに、本研究では、両国の社会的・文化的関係を根底として、両国の宗教の相互受容と拡散の過程、受容後の変化を比較する。そしてそこにおける宗教文化的類似性と相違性を明らかにしようとする。このような両国における文化の相互受容の実態を宗教文化交流という側面から実証的に調査し、そのメカニズムを比較文化・社会論的に考察する試みはいまだ十分にはなされていない。その意味でこの研究は、日本・韓国の宗教学・宗教社会学においても画期的な試みであるし、その成果は、当該学問領域のみならず、両国の国際関係のいっそうの緊密化と理解に裨益するところ大であろうと考える。
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