研究概要 |
平成21年度は、エチオピア無形文化遺産を対象にした多数の民族誌映画制作で知られるエチオピア・ゴンダール出身のサムソン・ギオルギス氏(パリ在住)や、ユネスコ無形文化局局長のデュベル氏をはじめとするスタッフ等へ、保護・振興すべき「無形文化遺産」の認識、映像作品の管理・活用に関する聞き取り調査を行った。同時に、以上の点について、自らの経験を踏まえて、積極的な提言を行った。さらに、エチオピア音楽・芸能に関する民族誌映画を国際学会や各種のセミナー、大学講義の場で公表し、音楽・芸能を支える技や知識の、将来にむけた望ましい伝承法、そしてその記録方法論をテーマにした討論を積み重ね、映像記録した。以上で得られた見解や問題点を、論文にまとめ公表した(研究発表を参照)。また、第11回英国王立人類学協会国際民族誌映画祭(英国リーズメトロポリタン大学)において開催された無形文化映像コンペティションにおいて審査委員を務め、世界各地の無形文化を対象にした民族誌映画を批評し、制作者、参加者と広く意見交換を行った。国際映像人類学理事会(IUAES, Commission on Visual Anthropology)理事として、理事会ウェブサイト構築に着手した(http://www.cva-iuaes.com。本ウェブサイトは今後、無形文化遺産を対象にした民族誌映画投稿の場となるのみならす、記録、表象の方法論をめぐるインタラクティブな議論のプラットフォームとして発展していく予定である。 無形文化を対象にした映像記録を一方向的に実践するのではなく、映像の送り手、受け手、管理者等との重層的かつ、インタラクティブな意見交換を行うことは、国際的な動向の中で、映像実践をとらえ、映像人類学研究をひろく社会に開かれた応用的学問として昇華させうる可能性を持つ。
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