我々のこれまでのスピン格子緩和率や超伝導状態におけるナイトシフト測定のにより、コバルト酸化物超伝導体は、銅酸化物高温超伝導体と同じくd波超伝導と一致するという成果が得られていたが、今年度はさらにコバルト酸化物超伝導体がd波超伝導であることを示すために、超伝導状態におけるナイトシフトの磁場・温度依存性を測定した。測定の結果、超伝導状態におけるナイトシフトが磁場の平方根に比例することがわかった、これは超伝導ギャップ関数にラインノードがあることを示す結果であり、d波超伝導に一致するな結果である。さらに、ナイトシフトの磁場・温度依存性がd波超伝導モデルとよく一致することを確認し、d波超伝導モデルでのフィッティングにより、磁場誘起による残留状態密度も確認することができた。これらのことからd波超伝導である証拠をさらに得ることが出来たことは重要な結果である。 また、様々な良質の単結晶試料を用い物理量の測定を行った結果、ナイトシフト、1/T1T共にナトリウム濃度に依存し、ナトリウムドープによって状態密度が変化しているという結果を得ることができた。これまでの我々の研究により、コバルト酸化物超伝導では銅酸化物高温超伝導体と同じく超伝導転移温度と状態密度、スピン相関の大きさとの相関が指摘されており、ナトリウムドープによって状態密度が変化しているという結果は非常に重要である。 2008年の2月に発見された鉄ヒ素系超伝導体はコバルトや銅酸化物と似ており超伝導転移温度も高く、注目を集めている物質である。それらの物質に関しても測定を行い、超伝導の対象性について研究した。その結果、超伝導ギャップが2つあるということを突き止めた。
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