研究概要 |
【背景】癌の増殖、転移には癌由来の血管、リンパ管新生因子が関与するため、これらの制御は予後向上のための治療標的となる。【目的】癌由来の抗血管、リンパ管新生制御因子を探索する。【方法・結果】マウス肺癌LL/2細胞よりcDNAライブラリーを構築し、独自のHVJ-Eを用いたHigh Throughput Functional Screeningにより増殖抑制候補遺伝子cold shock domain protein A(CSDA)を特定した。CSDAは血管内皮細胞(HAEC)、リンパ管内皮細胞(LEC)両方の増殖能を抑制した(c-fos promoter assay; 84.9%inhibition in HAEC,97.3%inhibition in LEC under 10%FBS condition)。正常組織では骨格筋と心臓に特異的に高発現し、血管・リンパ管内皮細胞にもわずかに発現していることを確認した。細胞内局在は主として核であった。Deletion mutantによる検討により、この増殖抑制活性にはcold shock domainが必須であることを確認した。CSDAの増殖抑制の作用機序として、既報のHypoxiainducible factor-1の作用抑制に加えて、serum response region(SRE)を抑制することを確認した(SRE assay: 45.1 % inhibition in HAEC,97.0% inhibition in LEC under 10% FBS condition)。生体でのCSDAの作用を確認するために、マウス背部皮下にLL/2細胞を移植した担癌マウスモデルにCSDAを反復して遺伝子導入すると、腫瘍周辺の血流低下と転移減少の傾向を認めた。【まとめ】CSDAは血管、リンパ管新生を同時に抑制しうる新規の制御遺伝子であり、癌治療の次世代の治療戦略となりうることが示唆された。
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