研究概要 |
本年度に実施した研究は、親しい他者からの「ネガティブサポート」の心理的適応への影響を、他者依存性という個人要因が緩衝しているかどうか検討することを目的としていた。他者依存性の個人差が顕著になるであろう術前の乳がん患者を対象に、郵送による質問紙調査を行った。返送により同意の確認できた150名(平均年齢:50.6±9.2歳)を分析対象とした。質問項目は、患者の属性、ネガティブサポート項目(過剰関与因子・問題回避因子・過小評価因子)、心理的適応(HADS)であった。 他者依存性得点の平均値で分けて、高群(N=74)と低群(N=76)に分類した。群間で、年齢、術式、腋窩の郭清状況、リンパ節転移の数に違いはみられなかった。各群で、ネガティブサポートが心理的適応に及ぼす影響を検討したところ、低群においてのみ問題回避的サポート(β=0.50,p<0.01)と過小評価的サポート(β=-0.23,p<0.10)が心理的適応に有意な影響を及ぼしていた。多母集団同時分析を用いて、各群におけるパラメーター間で差がみられるか検討したところ、問題回避的サポートには5%水準で、過小評価的サポートには10%水準で有意な差がみられた。 他者依存性によって、ネガティブサポートが心理的適応に及ぼす影響が異なることが示された。今後は、サポートの受け手の特性によってサポートの効果が異なることだけでなく、サポートの文脈やサポートの送り手の特性を考慮して検討していく必要性があることが示唆された。
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