研究課題
本研究では、細胞分化はどのようにおこるかを命題に、赤血球分化に重要な転写因子GATA-1の発現制御に注目して解析を進めてきた。これまでに、ゼブラフィッシュGatal(gatal)遺伝子の発現が異常となる突然変異ゼブラフィシュを単離し、その責任遺伝子はヒストン脱メチル化酵素(LSD1)であることを明らかにした。ゼブラフィッシュLSD1の酵素活性を調べた結果、ヒトLSD1と同様にピストンH3K4のmono-、di-メチルを脱メチル化したことから、ゼブラフィッシュLSD1も、標的遣伝子の転写に対してエピジェネィックな制御を行うことが予想された。血球分化に対するLSD1の役割を調べるために、マーカー遺伝子の発現解析を行った結果、通常gatalによって発現抑制されるpu.1は、gatalの減弱するit627において発現に変化が見られなかった。一方、未分化細胞マーカーflilaの発現が、野生型ではすでに発現が消えた時期でも、it627の造血組織で発現し続けていた。このことは、少量のgatalが発現すれば、pu.1を抑制できるが、血球分化を促進するために十分量のgatalが必要であることを示唆している。LSD1はgatalの発現量制御を行うと仮説をたてたが、LSD1の標的因子は明らかにできていない。そこで、LSD1の標的がgatalのみか、あるいは、それ以外にも存在ずるかを探るために、GATA-1過剰発現によるレスキュー解析を試みた。To12トランスポゾンシステムを活用することにより、後期胚、幼魚での表現型観察が可能な造血組織特異的遺伝子発現システムを立ち上げた。it627についての解析結果をまとめることができていないが、この解析系の利用によって、LSD1の制御メカニズムを探る新たな解析系を手に入れることができている。
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Development, Growth & Differentiation Volume 52
ページ: 245-250