研究概要 |
1.多段メタ磁性体CeIr_3Si_2については多結晶での物性報告しかなく,0.2μ_Bの強磁性成分を伴う多段メタ磁性の機構や異方性についての情報を得るには単結晶を用いた磁性と伝導の測定が不可欠であった。そこで,初めて育成に成功した単結晶試料を用いて磁気測定を行い,非常に強い容易面磁気異方性を見出した。また,磁化率のデータを結晶場モデルを用いて解析し,4f電子の結晶場基底状態の波動関数を決定することで,この強い磁気異方性を説明した。結晶場分裂幅がCe化合物で最大級の1600Kもあり,CeIr_3Si_2は巨大結晶場分裂とスピン軌道分裂が拮抗する稀な系であることがわかった。この成果を,国際学術誌に論文発表するとともに強相関電子系国際会議SCES'07(米国ヒューストン)で発表した。 2.重い電子状態と弱い強磁性の共存する希な系であるCe_4Ni_3Pb_4の単結晶化に初めて成功した。0.002μ_B/Ceという弱い強磁性の発現機構を明らかにするために単結晶を用いた物性測定を行い,磁場を三方晶のc面内に印加した場合のみ磁気転移温渡(T_N=3K)以下で弱い強磁性成分が現れるという異方性を見出した。中性子回折実験を行い,T_N以下でc軸方向に格子の2倍周期の反強磁性秩序を確認した。Ce_4Ni_3Pb_4が示す異方的な弱い強磁性は,LS結合の強い4f電子系におけるジャロシンスキータイプ反対称交換相互作用の有無を初めて問題提起した。空間反転対称性が欠如した系での超伝導発現はホットな話題であるので,Ce_4Ni_3Pb_4でも磁気臨界点近傍での超伝導発現を期待し,2.7GPaまでの圧力下電気抵抗測定を行った。加圧によりT_Nは1.2Kまで減少したが磁気臨界点到達には5GPa程度必要と予想される。
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