本研究ではこれまでに梨状皮質からの神経活動の記録を行うため、軸索末端の活動を効率的に記録することが出来るsynaptopHluorinタンパク質を、嗅球から梨状皮質への投射細胞である僧帽細胞に特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成を行った。このマウスより、蛍光顕微鏡および冷却CCOを用いて嗅球の糸球層電気刺激に対する梨状皮質の応答を記録した。本年度はこの結果が実際に嗅球投射細胞の軸索投射パターンと一致するかを検証するため、嗅球単一投射細胞の軸索投射パターンを可視化する実験を行った。麻酔下マウスの単一僧帽・房飾細胞より傍細胞記録法により活動電位を記録し、特定の匂い刺激に応答する細胞を同定した。引き続き、傍細胞イオン導入法により順行性トレーサーを注入し、動物を復帰させた。復帰3日後に動物を固定し、薄切片を作成、トレーサーを免疫抗体法により可視化した。この可視化された軸索・樹状突起をNeurolucidaシステムにより三次元再構成を行い、軸索の嗅皮質内での分布を解析した。 その結果、単一僧帽細胞は嗅皮質個々の領域のほとんどすべてに軸索を投射していることが明らかになった。一方、房飾細胞は嗅皮質の前方の領域のうちの限られた部分にのみ投射をしていることが明らかになった。次年度以降は、可視化する細胞群を増やし、嗅球の受容体地図が全体として嗅皮質にどのように変換されているのかの法則性の解明を目指す。
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