平成20年度はまず、前年度(平成20年1月)から継続しているインド・アッサム州でのフィールドワークを7月まで実施した。家族構成・土地所有・農業・家畜などに関する質問票を用いた全戸調査を完了した。携帯型GPSとGISソフトウェアを用いて調査村の土地利用図・水田所有図を作成した。調査結果については現地のカウンターパートであるゴウハティ大学地理学科のバガバティ教授と議論した。 7月から11月までは国内で、これまでのフィールドワークの成果をまとめることに専念した。浅田ほか(2008)はヒマラヤ地域における住民と自然環境との関係について2次データを用いて考察したものである。Murata et al.(2008)では世界最多雨地の1つであるインド東北部のチェランプンジの降雨特性とその要因を気象学的手法を用いて明らかにした。浅田(2009)はフィールドワークの経験を基に、アッサム調査村の言葉、食習慣、生業、社会慣習などをまとめたもので、タイ系のアホムの人々の独自の文化も未だ根付いていることが分かった。Asada&Matsumoto(2009)ではガンジス・ブラマプトラ川流域を対象として、過去40年間の降雨と稲作の関係性を考察した 12月から3月まで再び調査村に滞在しフィールドワークを実施した。2008年度の稲作・乾季作の状況、家計調査、水文環境の変化などの関する聞き取り調査を行った。2次データに関しては農業局・治水局・統計局などから各種統計データを入手した。これらのデータから、近年の急激な環境変化により調査村では稲作の収量の低下・作付時期の変化など影響が表れているが、村人の側からは有効な対応策が取られておらず、伝統的な稲作が危機にさらされていることが明らかになった。
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