研究概要 |
球状トカマク実験装置UTSTではワッシャーガンで生成されたプラズマを種プラズマとして、球状トカマク(以下ST)を生成する。ワッシャーガンは磁気ミラータイプの装置で使用される事があるが、ST装置としては使用例がないため、ミラー装置で動作実績のある設計をST装置用に改良した。具体的にはワッシャーガンの放電路を磁場と平行にする必要があることがわかり、真空容器内にワッシャーガン傾斜装置を設置した。しかし、それでも実験状況によって磁場の傾きが変わるため安定してプラズマはつかなかった。そこで、ワッシャーガンの電極間距離を短くすることでこの問題を解決した。また、真空容器内に高電圧の電極を設置するため、真空容器壁に対して絶縁破壊が起きないようにする工夫も必要であった。以上の改良により強いトロイダル磁場でのワッシャーガンを用いた実験が可能になった。 平成19年度始めはUTSTが当初予定した電源設備が整っていなかったため、電源の改良も行った。フラックススウィングに用いる電源を850μF,100kJから1600μF,200kJに増設し、トロイダル磁場に用いる電源を8mF,100kJから25mF,300kJに増設した。また、外部コイルの誘導によって生じる真空容器の渦電流をフィラメント近似で求めるシミュレーションコードを作成した。 ワッシャーガンの改良と電源の増設により、UTSTで初めて球状トカマクを生成することに成功し、100kA程度のプラズマ電流が得られた。また、センターソレノイドコイルを使わず、外部コイルのみによるフラックススウィングでもプラズマを生成することに成功し、世界で始めて外部コイルのみを用いてプラズマ合体をさせて高ベータなSTを生成するという当初の研究目標へ大きく前進した。
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