1、〈遊女〉呼称(「遊女」「傀儡子」「白拍子」「傾城」等)の変遷を語彙史的に研究するため、中世前期遊女史料の蒐集・分析を行った。 2、<遊女>史研究の基本史料となる大江匡房の『遊女記』『傀儡子記』は『朝野群載』に載せられているが、刊本はいずれも問題の多い本文である。近年の研究状況に基づき、『朝野群載』諸本の調査・校異を行った。 3、<遊女>史において重要な意味を持つ後白河・後鳥羽両院の文化的位置を確認するため、「院政期における後鳥羽芸能の位置」「後鳥羽芸能の全体像」の2論文を公にした。この中で、両院が<遊女>と接触した背景についても言及した。 4、論文「後白河と<都市民>」の補訂。 5、中世歌謡研究会等に参加し意見交換。 6、『蹴鞠記』の諸本を調査し、その伝来過程を考察、口頭発表を経て論文にまとめた。論文は「天理図書館蔵『蹴鞠記』抄出-『順徳院御記』逸文と成通説話」として『日本史研究』に投稿し、採用が決定した。またこれに関連し、『道家公鞠日記』『藤原孝範蹴鞠記』『蹴鞠部類記』『前神主賀茂夏久県主記』等未翻刻の蹴鞠関連史料を調査した。 7、〈遊女〉の供給源ないし統括機関とされてきた内教坊について、その活動実態を明らかにするため未翻刻史料の蒐集を行った。
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