研究対象である托卵鳥のジュウイチは、寄生雛として宿主に育てられる間、翼の裏側に口内と同じ色をした皮膚裸出部があり、それを誇示することで宿主から給餌を引き出している。これは嘴と異なった部位にそれに似せた特徴を持つことで巣の中にいる雛の数を実際より多く錯覚させていると考えられる。申請者はこの仮説を対象種が実際に生息している野外において検証するため、野外調査および実験を行った。 5月中旬より8月中旬まで静岡県駿東郡小山町にて調査を行った。宿主であるルリビタキが雛の数に対し、どう反応しているかを検証するため、自然状態でのビデオ観察および人工的に雛の数を操作する実験を行った。また、ジュウイチによって托卵された巣においてビデオ観察を行った。現在までに宿主のルリビタキがジュウイチの雛によって誇示された裸出部の数に反応しているという結果が得られているが、9月中旬熊本大学において開催された日本鳥学会大会、3月中旬九州大学において開催された日本生態学会大会、訪問研究員として赴いたケンブリッジ大学動物学科進化生態行動セミナにおいて発表し、様々な研究者と議論することでより高水準の議論へ昇華させることができ、現在執筆はほぼ終了し、投稿準備中である。 9月末より12月末まで、英国ケンブリッジ大学動物学科に訪問研究員として在籍した。受け入れ先のデイビス教授は托卵鳥研究だけでなく、行動生態学においても第一人者であり、様々な研究者と交流を持つことができ、将来的な糧となる経験をした。
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