マウス由来の破骨細胞培養法を樹立した後、それを用いて電気生理学・生化学・分子生物学実験を進めてきた。具体的には次の通りである。1、マウスから骨髄を採取して、RANKL(Receptor activator of NF-kBligands)の存在下にて破骨細胞を誘導する。この培養法を樹立した。2、標的分子の一つであるHCN(Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide modulated channel)に着目して、破骨細胞におけるその機能を検討した。HCNのサブユニットであるHCN1-4の4つが骨中に存在することをRT-PCRおよびウェスタンブロッティングにより確認した。さらに、免疫染色により、HCN1とHCN4が破骨細胞に、HCN2とHCN3が骨髄細胞を骨芽細胞にそれぞれ局在することを示した。3、パッチクランプ法を用いて、HCNにより発生する電流(Ih)を破骨細胞において同定した。さらに、その活性は酸性条件下にて高まった。これはHCNが破骨細胞の酸放出時に機能することを示す。4、骨髄細胞分化におけるHCNの役割を検討するために、破骨細胞誘導時にHCNの阻害薬であるZD7288を添加したところ、破骨細胞への分化が阻害された。これは、HCNの骨髄細胞分化への関与を示している。5、酸感受性色素(BCECF)を用いて破骨細胞における酸放出能を検討した。プロトンポンプ阻害薬であるBafilomycinは破骨細胞の酸放出能を阻害した。ZD7288を適用した破骨細胞では、Bafilomycinと同様に酸放出能が阻害された。これらの結果はHCNの破骨細胞における酸放出機構への関与を示唆している。
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