研究概要 |
これまでコバルト酸化物超伝導体の電子状態は実験的に明らかになっておらず、その超伝導機構解明に寄与すると考えられる。本物質の角度分解光電子分光を世界で初めて行い、フェルミ準位近傍の電子状態を明らかにした。準粒子バンドを観測し、その温度特性が輸送特性と対応することを明らかにした。さらに冷却能力1.8K,エネルギー分解能150μeVを有する新型レーザー光電子分光装置を建設した。溜置式縦型クライオスタットの開発や、電子アナライザー及び光学系の改良を行った。本装置を用いて、コバルト酸化物超伝導体の超伝導ギャップを初めて観測することに成功した。角度積分光電子スペクトルの解析から、強結合超伝導体であることが明らかとなった。今後は単結晶試料を用いて波数空間における超伝導ギャップ対称性を決定したい。また、パイロクロア超伝導体KOs206における超伝導とラットリング運動の関係を明らかにするため、レーザー光電子分光を用いて超伝導ギャップ観測を行った。その結果、等方的s波の超伝導対称性を示し、さらに強結合超伝導体であることが明らかとなった。また、乱雑に動くKイオンが協力的運動を示すようになると考えられるラットリング転移近傍において、超伝導ギャップの発達が抑制される特異な振る舞いが観測された。Kイオンのラットリング運動(非調和振動子)が超伝導特性に影響を及ぼすことが示唆された。本結果はPhysical Review Letter誌99,117003,2007に掲載されている。
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