研究課題
ネオクリン(NCL)は西マレーシア原産の熱帯植物Cruculigo latifoliaの果実中に含まれるタンパク質で、それ自身も甘味を呈するが、味わったあとに酸を味わうと強い甘味を誘導する。この性質は味覚修飾活性とよばれ、NCL以外にはミラクルフルーツに含まれるタンパク質ミラクリンが知られている。しかし、ミラクリン質自身は甘味を示さない。従って、NCLは甘味活性と味覚修飾活性を併せ持つ唯一のタンパク質といえる。NCLのユニークな性質は味覚科学および食品産業の分野からも注目されていたが、どのようにして酸によって強い甘味が誘導されるかは不明であった。そこで、本研究ではNCLの酸誘導性の甘味活性を培養細胞評価系により客観的・定量的に計測した。ヒト甘味レセプター(hT1R2-hT1R3)とキメラ変異体Gタンパク質を共導入したHEK293T細胞の中性・酸性pHでのNCLに対する応答をカルシウムイメージングにより計測した。その結果、NCLへの応答はpHの上昇につれ減少した。また、NCLへの応答とpHの関係を詳細に解析した結果、NCLのHis残基の酸誘導性の甘味活性への関与が予想された。これを検証するため、NCLに存在する5つのHis残基を全てAla残基に置換したバリアント(HAバリアント)を麹菌発現系により生産した。HAバリアントに対する細胞の応答は、興味深いことに、NCLの場合と異なり、いずれのpHでも強いものであった。また、官能試験でも、pH4.0,pH8.0いずれのHAバリアントも、強い甘味を呈した。以上より、HAバリアントは酸誘導性の甘味活性を失い、pH非依存的に強い甘味を呈することが明らかになった。また、予想どおりNCLのHis残基が酸誘導性の甘味活性に重要な役割を担うことを示した。このバリアントはタンパク質工学的に作出した新規甘味タンパク質であるため応用利用が期待される。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
FASEB Journal (掲載確定)
Biochem.Biophys.Res.Commun 358
ページ: 584-589
Biochem.Biophys.Res.Commun 360
ページ: 407-411