リアルタイムイメージングによる画像情報と実際の植物体内のリン酸濃度について、植物処理条件によるが、相関を持った情報が得られることを確認することができた。修士課程で行ってきたダイズを用いたイメージングでは、引き続き種子形成期まで解析対象を広げ、リン酸のイメージング画像を得るとともに、葉からの転流についても^<32>Pトレーサーで解析することを試みた。その結果、リン酸欠乏処理の個体が積極的に鞘組織ヘリンの転流をおこなっていることが確認できた。 また、イメージング技術と分子生物学的手法を組み合わせた新たな視点で植物のリン酸応答機構を調べていくため計画当初、ダイズからモデル植物のシロイヌナズナに切り換える予定でいたが、イメージング装置の特性などから形態的により解析しやすいミヤコグサを対象植物に設定することにした。ミヤコグサは植物と菌との共生研究に主に用いられているが、基本的なリン酸応答機構についての報告はほとんど無い。植物側の基本的なリン酸応答機構の解明は菌根菌との共生の解明にも貢献するものと考えられる。そこで、ミヤコグサを用いて新たにリンのリアルタイムイメージ解析、機知の3つのリン酸トランスポーターの発現量についてリアルタイムPCRを用いて解析を始めた。ミヤコグサの組織別の解析結果によると組織ごとに3つのトランスポーターの使い分けがなされている事や、リン酸欠乏時にはリン濃度が高い若い組織で発現量が高まっているなど、リン酸応答性遺伝子の発現量と実際のリン酸の動態に相関性があることが確認できつつあるところである。さらにこの3つのミヤコグサリン酸トランスポーターについては、過剰発現、発現抑制の形質転換体を作製し、体内リン酸濃度と反するトランスポーター発現状態にある組織でのリン酸応答がどのように変化するのか解析していくこととし、現在、目的配列を組み換えたGatewayベクターの作製、アグロバクテリウムへの導入まで進めてきている。
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