極低温に冷却された原子の系ではトラップ形状や原子間の相互作用を幅広く調節できる。個数の異なる2種の内部状態にあるフェルミオン原子が引力相互作用する系で超流動を示す凝縮体が実現された。運動量の和が0でない2原子がペアを組む凝縮体の有無や、偏極度(原子数の差を和で割ったもの)が1に近づくと途中で凝縮しなくなるかに関心が集まっている。 我々は、1次元系でどのような凝縮体が生成するか、偏極度が大きくなっても凝縮が実現するかを、密度行列繰り込み群(DMRG)により多体系の相互作用を数値的に厳密に扱って研究した。引力ハバード模型を採用し、調和振動子ポテンシャルのある場合に、偏極度を変えながら基底状態での各成分の密度分布と2体ペア相関関数を計算した。相互作用の強さを変えないままサイト数を増やすと、これらの結果が連続極限に近づくことを確認した。ペア相関関数と密度差分布はそれぞれ空間的に周期的振動を示し、その周期はトラップ中央部での密度差から運動量の和がフェルミ運動量のずれに一致する原子がペアを組むLO状態で期待されるものと一致した。偏極度が0.2程度を超えると、中央部に凝縮体、周縁部に多数成分のみとなる相分離が生じる。2体密度行列の固有値分布から、偏極度が少なくとも0.8程度までの範囲で、数個の状態に2体ペアが集積する準凝縮体が実現し、少数成分の原子のほとんどが凝縮に寄与することがわかった。 ボソン原子気体を蒸発冷却したときにBose-Einstein凝縮体が成長する過程について、既存の理論研究では、核形成の初期段階のダイナミクスはよく理解されていない。1次元で弱く相互作用する数十個のボソンの系の基底状態に擾乱を加えて励起状態の波動関数を生成し、ここから速い原子を除去した状態の時間発展をDMRGにより計算したところ、凝縮体の量に対応すると考えられる最大固有値が成長することを見出した。
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