研究概要 |
γセクレターゼは,アルツハイマー病で脳内に蓄積が見られるアミロイドβタンパク質(Aβ)を産生する酵素である。近年の研究から,γセクレターゼは,presenilin,nicastrin,Aph-1,Pen-2の4つのタンパク質の複合体であると考えられており,また,γセクレターゼの基質は複数箇所で切断を受けることが分かっている。このようなことから,γセクレターゼは,複雑な基質切断機序を持っていることが示唆されてはいるが,酵素学的な解析はまだまだ発展途上である。昨年度,哺乳類の内在性因子の存在を考慮する必要のない系として,酵母の膜画分を用いた無細胞アッセイ系を樹立した。今年度は,まず,新しく樹立したこの系で示されるγセクレターゼの性質が,哺乳類細胞を用いた従来のアッセイ系で見られるそれと同等であるかを主に検討した。界面活性剤,脂質,pH,γセクレターゼ阻害剤が,酵母に発現させたγセクレターゼの活性に与える影響について調べた結果,それらは哺乳類細胞におけるそれと同じであった。このようなことから,酵母を用いたγセクレターゼのアッセイ系は,正しく機能していると言えた。次に,γセクレターゼが産生するAβには,40残基のAβ40や42残基のAβ42,43残基のAβ43など,様々な長さのAβがあるので,この系でも,どのような長さのものができているかを探索したが,Aβ40,Aβ42,Aβ43の産生を確認することができた。この結果は,様々な長さのAβを産生するのに,上記4種類のタンパク質と基質とだけで十分であることを示していると言える。このin vitro assay系は非常に簡便であり,酵素と基質との関係を探索する上で同様の系が利用されていくことが期待される。
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