特別研究員採用1年目に当たる2007年度は、日本語圏や中国語圏における資料、文献収集が主要な作業となったが、これは報告者の研究において中核をなすものである。とりわけ2007年9月に台湾で3週間にわたって実施した資料収集では、非常に大きな成果を得ることができた。今回実施した台湾での資料調査では、中央研究院近代史研究所および国史館に所蔵されている中華民国外交部梢案のうち、報告者が研究対象とする1930〜40年代における目独関係に関するものを閲覧した。近年では日独防共協定や日独伊三国同盟の成立を、日独の二国間関係ではなく、東アジアとドイツの関係という視点から検討することが大きな傾向としてあるものの、日独関係に関わる中央研究院、国史館所蔵資料を体系的に扱った研究はまだ少なく、今回収集した資料はそれを進める上で基礎的な役割を果たすことが期待される。具体的には、華北工作期における多田・宋哲元協定、日独防)協定、トラウトマン工作などにおける中国側の状況を示す資料や、目中戦争開始後の中国と独伊両国の間の交渉を示す資料が多数見つかった。一方、この時期の日中関係に関する膨大な外交梢案からも、当時の日本の防共・枢軸外交を知る上で有用な情報が多く含まれている可能性があるが、今回の資料調査ではこれを体系的に収集することはできなかった。今年度も台湾をはじめ中国語圏での調査を継続し、以上の成果と合わせて論文の形で発表したい。
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