今年度は特別研究員採用期間の2年目に当たり、昨年度に続いて資料収集を継続すると同時に、国内外からの依頼に基づいて関連する諸研究を実施した。 前者に該当する研究活動としてまず挙げられるのは、2008年8月から9月にかけて実施した、ドイツでの資料調査である。今回は初めてフライブルクの連邦文書館附属軍事文書館に通い、ドイツ軍の対東アジア外交に関わる資料を多数収集した。さらに外務省政策文書館にも立ち寄ることができ、1930年代中期に関する資料で報告者がまだ内容を吟味していないものが存在していることがわかった。今後、ぜひ詳細に調査してみたい。 また2009年2月には、昨年度に続いて台湾の中央研究院近代史研究所での資料調査も実施した。昨年度は国民政府外交部档案のうち、日独関係や中独関係など、東アジアとヨーロッパの枢軸国の関係に関わるものの大半を閲覧、複写収集していたが、今年度は同時期の日中関係に関する文書を多数吟味することができた。 発表した研究成果としては、スヴェン・サーラ、シュテファン・ゼーベル両氏と共著での、日本の地方における歴史政策と歴史記憶に関する英語論文かおる。また、2008年に工藤章、田嶋信雄編『日独関係史:一八九〇-一九四五』(全3巻、東京大学出版会)が刊行されたのを受け、『史学雑誌』、『ドイツ研究』において書評を発表したほか、東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター開催の同書書評会においてパネリストを務めた。 もう一つの重要な研究成果として、世界12ヶ国で進められているプロジェクト「外から見た『第三帝国』:ナチ時代(1933〜1945年)のドイツ社会に関する領事報告」での発表がある。報告者はこのプロジェクトに日本側研究者として協力しており、2009年2月27〜28日にハンブルク大学歴史学研究所で開催されたワークショップではドイツ語での口頭発表を行った。
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