今年度は、教育財政支出の政策過程に関する計量分析と事例分析を行った。計量分析については、1970年代以降の先進国における教育財政支出に関するパネルデータを用いてその変動要因に関する分析を行った。特に比較政治学的な視点から議院内閣制における政治制度における権力の集中度・分散度が国レベルの教育財政支出に及ぼす作用を考察し、執政府における制度的な権力の集中が、前年度実績への依存性および政権政党の政策選好の反映度を通じて教育財政支出に影響を与えていることを明らかにした。 事例分析においては、1970年代の教育財政拡大期における政策過程を分析した。中心的に扱った事例は教員人件費に関わる3つの教育費政策-人材確保法(1974年)を契機とした教員給与水準の改善、「40人学級」にむけた義務教育教職員定数改善(第4次および第5次改善計画)、人件費に関わる私学経常費助成-である。これらの事例分析においては「内外教育」、「日本教育新聞」の他に各省庁、教育団体発行の雑誌・新聞などの資料を用い、文部省、大蔵省、自治省および給与関係省庁の省庁間競合およびその処理の局面に焦点を当てて多角的に分析を行った。分析を通じて、内閣及び自民党幹部における総合調整アクターの役割を明らかにし、これらの分析を通じて、自民党文教関係議員、文部省、教育団体などのアクター群の影響力を強調する従来の「下位政府論」を相対化した。 上記の成果については論文にまとめ、学会誌などに投稿中である。
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