1、露店商集団の調査・研究 青森県津軽地方において、弘前露店商業組合と黒石露店商業組合の調査・研究を実施した。弘前露店商業組合には平成六年に定められた規約がある。この規約は、組合の性格や組合員同士の関係性を初めて明文化したとして組合員から高く評価されている。次年度以降、この規約にみられる慣行を民俗学的な視点から分析する予定である。黒石露店商業組合には明文化された規約はなく、組合長の裁量に組合員の結束がゆだねられてきたといわれている。しかし記録がなく詳細な聞き取りも困難で言説の妥当性を検討することはできなかった。 2、丑湯まつりの調査・研究 青森県黒石市の温湯温泉、同むつ市の薬研温泉において、温泉旅館の経営者に対して聞き取り調査をおこなった。「土用の丑の日に温泉に入ると無病息災」とは青森県でよく聞かれる俗信で、「丑湯」といわれる。温湯温泉では近隣の農家の人びとが無事に農繁期を乗り切って、疲れた心身をいやすのが「丑湯」であった。それゆえ温泉滞在時には娯楽が求められたし、その需要に応える露店商も黒石市内にいたため温泉街が露店で賑わった。一方、薬研温泉では遠方からの客が行楽で訪れることが多く、最寄りの町場である田名部から離れていることもあり、「丑湯」のときにも祝祭空間は形成されなかった。このように温泉地をとりまく地域の環境と客のライフスタイルが、「丑湯」の祝祭化に影響していることがあきらかになった。
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