研究課題
平成20年度も、サケ科イワナ属魚類オショロコマの生活史形質が個体群(河川)ごとに異なるかどうかを野外調査により調べ、そういった変異が環境要因によるものか、遺伝要因によるものかを区別するための共通環境下飼育実験を継続した。さらに、本年度は、こういった変異に与えるジーンフローとドリフト(遺伝的浮動)の影響を評価するためのDNA実験を行った。平成19年度に32本の河川においてオショロコマ(サケ科イワナ属魚類)の産卵時期の個体群開変異を調べたが、平成20年度はそのうち25本の河川で0歳魚の体サイズ組成を調べDNA解析のための鰭サンプルを採取した(約1,500個体分)。0歳魚の体サイズは平成19年度と似た傾向を示し(平成19年度に大きかった個体群は平成20年度も大きかった)、河川ごとに独自の自然選択が働いていることが示唆された。共通環境下の飼育実験では、一部の個体が成熟した。メスの成熟率は河川間で大きく異なり、一匹も成熟していない個体群もあれば、ほぼ100%成熟している個体群もあり、成熟率が遺伝的に異なることが明らかとなった。さらに、繁殖時期も個体群間で異なり、遺伝性を持っていることが示唆された。繁殖時期に遺伝性が関与しているという本証拠は、平成19年度に32河川で調べた繁殖時期の個体群変異の野外データを強く補強するものである。現在、約1,200個体のDNA抽出が終わり、うち600個体(10個体群)においてマイクロサテライト10遺伝子座を用いた予備解析を行っている。手法によって結果は異なるが、概ね良好な有効集団サイズが得られており(10-200個体)ドリフトの評価は十分に行なえるものと期待している。
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Journal of Applied Ecology (印刷中)
日本生態学会誌 (印刷中)
Population Ecology 50
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