平成22年度はDNA実験、データ解析および論文執筆を行った。なお、平成22年10月16日から北海道大学の特任助教に採用になり、特別研究員の実質的な研究は最初の半年に加え就職後の空き時間に行った。 多くの生物種は自然選択により環境に適応した生活史形質を持っていると考えられている。本研究では、河川性サケ科魚類の繁殖時期に着目して30個体群にもおよぶ大規模な野外調査を行い、自然界での局所適応を調べた。その結果、水温が全く異なり産卵時期が異なると予測される河川においてさえ適応的な形質を持っていないことが示された。マイクロサテライトDNA解析の結果、河川間で遺伝的交流が存在し、それが最適値の実現を妨げていることが示唆された。一方で、滝によって遺伝子流動が阻害されている個体群においては産卵時期が一ヶ月も早く、局所適応していることが示された。遺伝子流動が局所適応を阻害することは多くの理論研究で示されているが、実証研究は数少ない。特に、多数の個体群を網羅的に調べた研究は皆無であり、本研究はこの進化生態学的に重要な仮設を強く立証した世界初の研究となる。現在、投稿間近であり、進化生態学の一流誌Evolutionに投稿予定である。現在、この研究をさらに発展させた遺伝的浮動の影響を加えた解析を行っている。
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