研究概要 |
1)トランスジェンダー(性同一性障害を含む)に関する2本の投稿論文と性機能障害の事例研究に関する1本の投稿論文が受理・公刊された。『パーソナリティ研究』に採択された「ジェンダー・アイデンティティ尺度の作成」論文では,これまでジェンダー・アイデンティティが性役割で測定されてきたことに批判を加え,アイデンティティ理論の立場から心理測定を可能にし,信頼性・妥当性を確認した。また,275名の性同一性障害当事者におけるこの尺度と典型的性役割との関連を検討したものが『心理臨床学研究』に掲載された。さらに,性機能不全(挿入障害)をもつ女性クライエントの曖昧な言語表現について考察を行った事例研究が『日本性科学会雑誌』に掲載された。 2)国外学会では,2本の口頭発表を行った。シドニーで開催された『The 18th World Congress of Sexology(Sexual Health)』では,トランスジェンダーにおける身体的治療とジェンダー・アイデンティティとの関連についての横断調査の報告をおこない,シカゴで開催された『The 20th International Symposium of The World Professional Association for Transgender Healty(トランスジェンダーに関する医療・法律・教育・その他専門家が集う国際学会)』では,ジェンダー・アイデンティティに対するホルモン療法と手術療法の効果を追跡した調査報告を行った。なお本発表は,分科会ではなく全体会に組み込まれており,世界各国のFollow up study報告の一つとして口頭発表された。 3)H19年度の終盤に,報告者は,行動遺伝学の立場から分析をした,性役割パーソナリティの個人差の遺伝的・環境的性差に関する論文を国内誌に投稿した。現在審査中である。現段階で報告者は,既に双生児のさまざまな性的諸側面に関するデータを収集し終えている。H20年度は,遺伝的・環境的性的自己形成のメカニズムについて,得られたデータからさまざまな分析を試み,妥当なモデルを生成したいと考えている。
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