報告者は、日本浄土教における中世神道理論の受容と形成の過程を解明すべく、浄土宗の学僧、了誉聖冏(1341~1420)の神道関係著作の研究を行った。本年度は、中世を代表する両部神道書『麗気記』全18巻に対する聖冏の註釈書『麗気記私鈔』『麗気記神図画私鈔』『麗気記拾遺鈔』(以下『私鈔』『神図画私鈔』『拾遺鈔』)の研究を継続しておこなった。 とくに『私鈔』『神図画私鈔』における神道図像「神体図」に関する註釈を抽出し、考察を加えた。その結果、聖冏が、『麗気記』に描かれる神体図を「重如月殿」という図像の展開形ととらえ、さらに「重如月殿」図を、両宮不二・両部不二という伊勢神宮の深秘のシンボルとしていたことを明らかにした。これにより、聖冏の神体図註釈が、いわば神学と呼べるほどの高度な思想的営為であったことを明らかにすることができた。上記の研究成果については、論文発表を行った(『日本思想学』41、2009.9)。 さらに平成19年度より今年度までの研究成果を博士学位請求論文としてまとめ、早稲田大学に提出し、博士(文学)の学位を取得した。博士論文は平成22年度中の公刊を予定している。
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