平成19年度は、主に野外調査と実験解析を集中のに行った。4月下旬から6月にわたり、関東地方東部計800km^2の地域を対象として、200箇所よりアオキを1000個体採集し、各個体の遺伝的起源を明らかにした。結果、約30%は遺伝的起源からみて明らかに非自生個体であり、人為的導入に端を肇する植物の自然環境5の逸出が広範囲に及んていた。また、自生個体と同じ遺伝的タイプを示す個体の中にも植栽された個体が多数含まれ、商業的流通を経て植栽された可能性が高かった。詳細なスケールにおいては、つくば市周辺地域に注目し、解析を進めた。その結果、非自生個体の出現頻度には人目密度と相関があり、都市部に植栽されている個体群億自生・非自生タイプ共に周辺農村地域や森林に生育する集団に比ベ遺伝的多様性が低いことがわかった。つまり、人為的活動圏内に植栽され登個体は、自然自生集団と同、じタイプに分類される個体であっても、その遺伝的多様性は自然集団とは大きく異なる可能性があり、造園・園芸用植物材料の自然集団への「目に見えない」影響を示唆す蚤重要な結果を得た。現在、その一部結果を学術論文として執筆中である。また、近畿・東海・関東地方におけるアオキの自然集団の遺伝的多様性の解明に向けた調査を行った。関東地方において確認されたアオキの非自生タイプの自然生育地域が近畿・東海地方であり、この地域における自然集団の遺伝的組成を把握することにより、関東地方で同所的に生育する自生・非自生個体の交雑の様子をより相対的に解析できるようになると考えた。これら調査地域では遺伝的に異なるタイプのものが同所的に生育している場所は皆無であり、また関東地方で多く見られた斑入り個体も確認されなかったことから、改めて関東地方での人為的植栽由来個体と自生個体との遺伝的交流の様子を明らかにすることの重要性が認められた。現在は結果解析の段階にある。
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