本研究では、アポトーシス関連因子ALG-2(apoptosis linked-gene2)のカルシウム依存的相互作用因子認識機構を明らかにすることにより、ALG-2の生体内での役割解明に寄与することを目的としている。 本年度は、ALG-2をカルシウム存在下、カルシウム非存在下、相互作用因子であるAlixの相互作用領域ペプチド存在下での複合体のX線結晶構造解析に成功した。ALG-2はこれまでに、カルシウム存在下でのX線結晶構造解析は報告されているが、カルシウム非存在下や相互作用因子との複合体の構造解析は報告されておらず、本研究が初めて成功した。カルシウム存在下とカルシウム非存在下での構造解析に成功したことで、ALG-2のカルシウム依存的な構造変化は、5つあるEF-handのうちEF3とEF5で主に起こり、この構造変化が相互作用因子認識に重要であることが示唆された。また、ALG-2/Alixペプチド複合体の構造解析により、結合残基が推測されたことから、ALG-2におけるAlixとの結合残基の重要性の評価を、プルダウン法を用い行った。その結果、検討した残基(Met71、Tyr91、Trp95、Tyr124、Arg125、Gln159、D169、Tyr180)は、Met71とGln159以外、全て結合能が低下した。このような構造学的解析と生化学的解析から、ALG-2がAlixを認識するにはArg125が重要であり、EF3にカルシウムが結合することによる構造変化が、Tyr124とLeu158の疎水性結合の切断を引き起こし、Arg125を制御しているという新しいモデル(Ca^<2+>/EF3-driven arginine switch mechanism)を提唱した。
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