本年も昨年に引き続きミシェル・フーコーの方法論についての研究を進めた。特に、言語行為論に関する文献を読み進めた。 また、フーコーとカントをつなぐテーマである啓蒙についての研究も進めた。カントの歴史哲学と啓蒙論は、フーコーが自身の方法を練り上げる上で強く意識していた事柄である。というのも、フーコーは自身の研究を現代における「批判哲学」と位置づけ、自己創出のプロセスとして系譜学を構想しているからである。哲学における自己創出という問題は晩年のフーコーの研究テーマでもあり、2008年に出版された講義録Gouvernement de soi et des autresでパーレシア概念の研究という形で展開されている。そこで、カントの歴史哲学について概観するとともに、フーコーの前述講義録に依拠しつつ、フーコーと啓蒙について研究会で発表した(社会哲学研究会)。 フーコー研究と平行して、セックスの哲学についての研究も行っている。英米圏で展開されているPhilosophy of sexは、「性的」とはどういうことかといった原理的問いから売買春やセクシュアル・ハラスメントのような応用倫理学的な問いまで含んだ興味深い領域であるが、日本での受容はさほど進んでいない。そこで、本年はセックスの価値に関する研究や売春合法化論をめぐる議論の検討などを行い、発表した(京都生命倫理研究会)。
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