研究概要 |
下垂体前葉と中葉は発生学的に同一起源であるが,視床下部からの調節システムは大きく異なっている。特に前葉は視床下部-下垂体血管系により,前葉ホルモンの分泌が制御されている。このうち,正中隆起下面に広がる第一次毛細血管叢2前葉内に広がる第二次毛細血管叢をつなぐ下垂体門脈の形成因子やメカニズムについでは未だ明らかなっていない。こめため,ラット発生過程において,下垂体門脈の形成が見られ始める胎齢13.5日の下垂体からcDNAライブラリーを作製し,分泌性タンパク質と膜タンパク質を網羅的に解析する手法であるSignal Sequence Trap法を行った。550クローンをダイレクトシーケンスし,機能未知因子とすでに血管新生能が報告されている既知分子についてラット発生過程でin situ hybridization法を行い,発現部位の探索を行った。しかしながら,これまでに調べた分子に関して,下垂体門脈が下垂体へ侵入する部位で特異的に発現するものはなかった。したがって,今後は他に得られた因子についてその発現部位の解析を行い,下垂体門脈特異的誘導因子の同定を目指す。その一方で,今回の解析から,delta-like protein 1(DlKl)が豊富に発現していることを明らかにした。DlKlは一回膜貫通型のNotch familyに属する分子であり,脂肪細胞の分化を抑制するなど細胞分化への関与が報告されている。そのため,現在,下垂体門脈系誘導因手の向定を進めつつ,DlKl下垂体細胞会化への関与についても解析している。
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