本年度は隕石の海洋衝突の際の、隕石主要鉱物(オリビン、鉄)と海水との反応機構を解明するため、これらの混合試料を用いた衝突回収実験を行った。その生成物の透過型電子顕微鏡観察により、オリビンおよび金属酸化物の超微粒子の生成とオリビンの水質変質鉱物であるサーペンティンの生成を確認した。また、隕石中の金属が海水により容易に酸化されることも確認し、この反応により、隕石衝突の際には水素が放出されることも示唆された。これらの結果のうち、超臨界流体による超微粒子生成についてはEarth and Planetary Science Letterに掲載されるに至った。また、サーペンティン生成についても論文を作成し、Earth and Planetary Science Letterに投稿し、現在は査読中である。衝撃反応における超微粒子生成と水質変質は世界初の現象を捉えたものである。 さらに、これらの結果を踏まえ、隕石の海洋衝突によるグラファイトからの有機分子生成を明らかにするために、炭素を含む限石模擬物質を用いた衝突回収実験を行った。この生成物から有機物を抽出し、LC/MSおよびGC/MSにより分析を行った。その結果、アミン、カルボン酸などの有機物の生成を確認した。 この結果は世界初の成果であり、今後は追加実験、分析を行うことにより、海洋衝突現象による有機分子生成を証明し、論文を発表する予定である。 これにより、研究目的を達成できる見込みである。
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