本研究は、これまでに同定されたLPA受容体だけでは説明できないLPAの多種多様な作用、さらには細胞によってLPA分子種認識に違いが生じるメカニズムを明らかにすることを目的とする。今年度(〜平成20年3月31日)の研究実施計画は、1.現在同定されているLPA受容体、すなわちLPA1-5の発現細胞株等を用い、様々な分子種のLPAに対するリガンド認識の違いを評価するというもの、また2.ヒト血小板に存在するLPA受容体の性質を明らかにするというものである。 1.LPAI-5のそれぞれを安定に発現するRH7777細胞株を樹立し、そのカルシウム応答を観察し、各種受容体のリガンド選択性について検討した。また、LPAアナログの影響を検討した結果、LPA1-3選択的アゴニストやLPA4、5選択的アゴニストを見いだした。また、私はLPA1-5とは異なるリガンド選択性を示す新規のLPA受容体の同定にも成功した(未発表)。 2、LPAはヒト血小板において強い凝集促進効果があること、この作用おいてアルキル型LPAが強い活性を示すことが古くから知られていたが、そのリガンド選択性プロファイルと同様のプロファイルを示すような受容体は未同定であった(血小板型LPA受容体)。今回、LPAによるヒト血小板の凝集作用とそのリガンド選択性について、検討を行った。既報通り、アルキル型のLPAがヒト血小板凝集反応を強く引き起こすことが確認された。上記1)での検討の結果、アルキル型LPAに対して強い選択性をもつLPA受容体がLPA5であることを見出しており、血小板型LPA受容体の本体がLPA5である可能性が示唆された。また、上記1)の各種LPAアナログの血小板に対する作用を確認したところ、LPA5過剰発現細胞を用いて得られたリガンド活性プロファイルと同一のプロファイルが確認された。私はヒト赤芽球性自血病細胞株(HEL細胞)もアルキル型LPAに強く活性化されること、LPA5を強く発現していることを明らかにしているが、同細胞株のリガンド選択性においても、LPA5過剰発現細胞で得られた選択性と同一のプロファイルが認められた。以上の結果より、LPA5が長年未同定であった血小板型LPA受容体の本体であると考えられる。
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