現在まで報告されていないジャンガリアンハムスターの異型線維腫(神経節細胞様細胞性腫瘍)の悪性症例に関して、組織学的、免疫組織化学的に検索した。組織学的には神経節細胞様細胞の交錯状、充実性増殖から成り、異型線維腫と似ていたが、局所浸潤性、腫瘍細胞の多形性、異型性などの悪性所見が認められた。また、渡辺鍍銀法により、細胞質内の微細線維の存在も確認された。免疫組織化学的に、腫瘍細胞は抗エストロゲンレセプター抗体、抗デスミン抗体、抗α-平滑筋アクチン抗体に陽性を示し、これまでの報告にない新たな知見が得られた。組織球系、神経系マーカーには陰性を示した。これらの結果から、本腫瘍が未分化間葉系細胞由来であることを支持し、悪性転換にエストロゲンが関与することが示唆された。本症例は暫定的に異型線維肉腫と診断された。同時に認められた副腎褐色細胞腫についても検索し、形態学的、免疫組織化学的特徴が明らかにされた。本症例は第145回日本獣医学会学術集会で報告された。良性病変を主体に研究された既存の報告とは異なる知見が本研究において明らかとなり、今後、ジャンガリアンハムスターの神経節細胞様細胞の実態を解明するための一助になり得ると考えられた。また、ペットとして飼育されていたシリアンハムスターにおいて発生した子宮平滑筋肉腫の形態学的特徴を解明し、初の報告を行った。これらの症例の蓄積が、今後のエキゾチックアニマル獣医療へ大きく貢献できると考えられた。
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